残業80時間で立ち入り調査

公開日 : 2016年4月5日


 政府は1ヵ月の残業が100時間に達した場合に行う労働基準監督署の立ち入り調査について、基準を月80時間まで引き下げる方針。法律違反があれば是正勧告などの措置をとる。

 調査の対象となるのは、従業員が1人でも80時間以上の残業をしていると疑われる場合に、労働基準監督署が立ち入り調査に入る。従業員による通報などで、特に悪質な企業を把握し、効率的に調査する。

 法律違反が見つかり、労働基準監督署が是正勧告しても改善しない企業は労働基準法違反で書類送検する。2015年には靴の販売店「ABCマート」を運営するエービーシー・マートが書類送検された例がある。

 2015年の労働力調査によると、全国の常勤労働者の数は約5,000万人で、100時間以上の時間外労働をしている人は約110万人いるとされる。時間外労働が80時間以上の人は約300万人で、今回の指導強化により調査の対象となる労働者は約2.7倍に増える。

 2014年に労働基準監督署が定期的な立ち入り調査を実施した件数は、全国で12万9,881件で、このうち7割で何らかの法律違反がみつかった。最も多かったのが違法残業など労働時間に関するもの。

 労働基準法では労働時間を原則1日8時間と定めていて、企業が従業員に残業を命じる場合、労働時間の超過理由を事前に明示した「36協定」を労使で結ばなければならない。厚生労働省は協定を結んだ場合でも、残業時間は月45時間までにするよう求めている。

 ただ「36協定」の特別条項付協定を結べば、月45時間以上の残業は可能なため、専門家からは「労働時間を際限なく延ばすことができてしまう」との声があがっており、指導を強めることにしたようだ。

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