セルフメディケーション(自主服薬)税制(29年2月12日)

公開日 : 2017年2月12日


 これまでの医療費控除の制度はそのままに「セルフメディケーション(自主服薬)税制」などと呼ばれる新たな特例が加わった。2016年度の税制改正に盛り込まれ、2017年1月からにスタート。
 
 従来の医療費控除は年間の医療費が10万円(総所得が200万円未満の人は総所得の5%)超とハードルが高かったが、特例では対象となる医薬品の合計金額が年間で1万2,000円を超えれば適用される。超えた分の金額(上限は8万8,000円)を控除できる。
 
「軽度な体の不調については自宅で市販薬を服用して自ら治療する『セルフメディケーション』を推進する」(厚生労働省)のが導入の趣旨。膨らみ続ける国の医療費負担を抑える手立てのひとつといえる。
 
 特例の実施は2021年12月末までの5年間で、自分だけなく、生計をともにする配偶者や家族の分も合算できる。
 
 対象となるのは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる医療用から転用された医薬品で、風邪薬や胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬、肩こり・腰痛の貼付薬など品目数は1,500を超え、薬局で扱う商品の多くを占める。該当するのは医薬品のみで、購入の際に利用した交通費などを含めることはできない。
 
 特例を使った確定申告は来年からになる。今年1~12月に購入する対象医薬品のレシートや領収書は保管しておく必要がある。
 
 確定申告の際には「健康の維持増進や疾病の予防に一定の取り組みをしている」という証明書類も必要。会社の定期健康診断や市町村のがん検診、メタボ健診などを受けていれば、その結果通知表(コピー可)を提出する。予防接種の領収書でもよく、インフルエンザの予防接種などは身近な例だろう。証明書類は申告する人の分だけでよい。
 

 今回の特例と従来の医療費控除を同時に利用することはできず、両方使えるケースでは、確定申告する人がどちらかを選ぶことになる。
 
 医療費控除と同様に控除を受けるには確定申告が必要だが、両者の大きな違いは対象となる支出。医療費控除は医師の診察や治療にかかった費用が主な対象だが、他にも通院時に利用した交通運賃や、ドラッグストアなどで購入した処方薬、一般の医薬品代など、対象は幅広い。一方、セルフメディケーション税制はスイッチOTC医薬品の購入費に限られる。
 
 注意したいのが、自治体に寄付すると2,000円を超えた分が一定限度額まで控除され、返礼品も受け取れることから利用者が多い「ふるさと納税」をしている場合。
 
 ふるさと納税では寄付先の自治体が5ヵ所以内なら「ワンストップ特例制度」が利用できる。確定申告しなくても、寄付先の自治体に申請書を送るだけで控除が受けられる制度だ。
 
 ただし、セルフメディケーション税制や医療費控除などのために確定申告すると、ワンストップ特例制度の手続きは無効となり、ふるさと納税の控除を受けるにはやはり確定申告が必要になる。

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